スペイン/メキシコ 2010
監督、原案 アレハンドロ・G・イニャリトゥ



スペイン、バルセロナのダークサイドに生きる男の、余命宣告を受けた最後の2ヶ月を描いた作品。

もう本当にこのイニャリトゥと言う人は息苦しくなるような痛々しい映画ばっかり撮って、いったいあなたのこれまでの人生、何があったんだ、と膝突き合わせて話をしたくなってくるほどですが、まあその、向こうが私の事なんて相手にしてくれませんね、はい。

やっとオムニバス形式で複数の物語が進行するパターンから離れたか、というのがまず評価したい点。

オムニバス形式が悪い、と言うわけではないんですが、それにとらわれすぎるのもあんまり良くない、と私は思うんで。

実際、過去作以上に集中力は増していたように思います。

物語を構築する上で演出に隙がない、と感じたし、登場人物たちの心の機微、揺れ動く関係性をこれまでになく丁寧に描写していたように思った。

特に双極性障害を患う嫁と子供達の間に立って苦しむ主人公ウスバルの心情は、不憫すぎてこっちがしんどくなってくるほど。

また、真っ当な仕事に手を染めていないウスバルの危なっかしい現実、脱しようにも脱せない袋小路を恐ろしくリアルに描いていることにも感心。

いやもう、半端な閉塞感じゃないです。

どうすれば改善できるのか、なにか少しでも良くなるための手立てはないのか、その糸口すら見えてこない状態。

そんな状況下にあっての、いきなりの余命2ヶ月宣告ですから、もう本当に監督は鬼か、と思う。

でもこれがスペイン社会の偽らざるアンダーグラウンドな現実なんだろうなあ、とも思う。

いうなれば負の連鎖。

命を削って良心にそむかぬよう生き抜いても、誰も助けてくれないし、奇跡の大逆転もなければ、颯爽と駆けつけるヒーローもいない。

そしてエンディング、なんとなくわかってはいましたが、あまりな情け容赦のなさに私は軽く落ち込みました。

もう、なんの光明も見出せないありさまで。

いや、ウスバルは残すべきものはちゃんと残した、って言う人もいるかもしれませんけど。

でもなあ、幼い姉弟の行く末を思うと、私なんかはどうしても気が滅入ってしかたなくて。

一切の救いのない事の方が大半なんだというリアルを、映画的なご都合主義でごまかさなかった大作だと思いますが、とりあえず鑑賞にはある程度体力が必要、とだけ。

ラストシーンがウスバルにとってのせめてもの慰め、みたいになっちゃってるのがまた泣ける。

唯一、なぜ?必要ないでしょうよ?と思ったのは主人公が死者の記憶を読み取る能力を持っていることですが、それを考えにいれないなら、進んで声高には言いたくないが、監督の最高傑作ではないか、と思います。

あえてタイトルのスペルが間違ってる理由もこれまた胸を打つ、ああ畜生。





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