アメリカ 2008
監督、脚本 ミシェル・ゴンドリー



変電所に侵入して磁気男になってしまった友人ジェリーのせいで、レンタルショップのビデオが全滅、困り果てたショップの店員である主人公はリメイクと称して自分達で有名な映画作品の模倣ビデオを作り、これを本物と偽り貸し出すが、意外にもそれが予想外の支持を得て・・・ってな滑り出しのコメディなんですが、やばい・・・と思ったのは前半全然笑えなかったこと。

ジャック・ブラックなどというスカッドミサイルクラスの俳優を起用しておきながら、この笑えなさはどうしたことか、と。

完全にジャックのハイテンションな演技のみが空回りしている状態。

なんていうか、ゴンドリー監督はフリとオチがわかってないんですよね。

オチだけ唐突に持ってこられてもぎょっ、とするのみで、そこから笑いの感情が湧いてくるまでは時間がかかる。

誘い水というか、笑いに観客を誘導する手管が下手。

それは演出にも言えていて。

かねてより、怪しい、怪しい、とは思ってたんですが、 この人の語り口って、押し引きが「ない」んです。

ただ淡々と経過のみを追う感じ。

それってドキュメンタリーじゃないかよ、って話であって。

磁気男なんてものを冒頭からぶちかますバカ映画の割には全然バカになりきれてないのがとにかく不安で。

中盤ぐらいまでは、ああこれはダメかもしれない、と集中力も途切れ気味に。

それを強引にひっくり返してくるのが中盤以降。

もう絵ヅラだけで勝負してる笑いなんですけど、さすがに手作り感満載のロボコップ姿や、2001年宇宙の旅の廻る回廊には失笑が漏れる。

なんとか挽回してくれるか、とさほど大きな期待を抱かずに迎えた終盤、これがね、実はとんでもなかった。

まさかまさかのエンディングに大号泣。

え、なんでこんなコメディで泣いてるの?と自分が不思議になるぐらい号泣。

映画に対する愛情は前半から透けて見えてはいたけど、それが実は壮大な前フリだったとは、と見事すべてが結実した着地点に思わず膝を打つ。

誤解を恐れずにいうなら、これ、もうひとつのニューシネマパラダイスです。

半ばオマージュじゃねえかよ、と私は思ったりもした。

実のところ、主人公たちが抱える問題は何も解決してないんです。

解決してないんだけど、よかったね、と心から言えるラストシーンがこの映画にはある。

前半が前半なんで、決して大傑作、と言うわけではないと思いますし、監督の資質そのものに疑問を抱く点もあるんですが、それでも彼なりのやり方でああいう場所に物語を導いた点を私は評価したいと思います。

ていうか、泣いてしまった時点で私の負け、なんですけどね畜生。

余談ですが、途中であっ、と驚く大物俳優が登場して驚かされます。

さすがにこれはうまい、と思った。

なるべくなら出演者のクレジットは見ずにご覧になることをオススメですね。

コメディだと思って油断してたら声を押し殺して鼻水をすする羽目になる快作でしょう。





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