アメリカ 2013
監督、脚本 J・C・チャンダー



冒頭で数分の独白がありますが、以降は一切のセリフなし。

インド洋で単独遭難した老齢の男の、生き残るためのサバイバルをただ淡々と描写。

主人公がなぜ1人、ヨットで大海原を渡航しているのか、そもそもどういう人間なのか、すべて明かされることはありません。

どうすれば誰の助けも得られないこの外洋で生き延びることができるか、そのための個人作業のみに焦点をあてて物語は進行。

いや、いつもの私なら主人公の背景が見えてこないこと、主人公が何を考え、どう感じているかが伝わってこないことを挙げ連ねて、ドラマ性がない、と言い放っていたことだろうと思うんですが、これがですね、なんだか小理屈じゃ切って捨てられぬ異様な緊迫感があって、妙に見入ってしまうんところがあるんですよね。

欠落したドラマ以外になにか気をひくものがあったのか、特に思い当たることはない。

それほど遭難した場合の緊急時対処法がうんちくとして興味深かった、と言うわけでもない。

もちろんデティールはしっかり詰められてます。

でも、ストーリー自体、あってなきようなものですし。

考えられるのは、具体的な顔を持たない男の決死の奮闘に対する「共感させる力」が尋常じゃなかった、ってことぐらいでしょうか。

主役に明文化された人格がないことが、海の上では等しく誰にでも起こりうることなのだ、と見る側の特別視を払いのける効果を及ぼしていたことは確か。

容赦ない大自然VS人、という構図が根源的な部分で感情移入を強くさせていた、と言うのはあった。

それを映像だけで語りかけた監督、無言の演技だけで表現してみせたロバート・レッドフォードはやはり凄かった、というべきなのかもしれません。

ああ、こう言う形でも映画は成立しうるんだ、と思えたのはちょっとした発見でした。

海面を境に、一方では先の見えない絶望、一方では海中からボートを撮影した美しい映像、というコントラストも無常観を感じさせて良。

1人芝居な作品で、こうもスリリングで海洋スペクタクルな映画って珍しいんじゃないでしょうか。

ただ生きようとする姿を至極シンプルに描いたことが思わぬ臨場感を産んだ快作だと思います。

不思議に記憶に残りましたね。





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