ロシア 2014
監督 アンドレイ・ズビャギンツェフ
脚本 アンドレイ・ズビャギンツェフ、オレグ・ネギン



市の開発計画の犠牲となり、住み慣れた土地と家をうばわれそうになる自動車修理工の孤独な抵抗を描いた人間ドラマ。

よくぞまあこの内容でロシア当局が横槍をいれてこなかったな、と感心するほど政治批判、反骨心に溢れた作品です。

ああ、やっぱりロシアってまだまだ旧社会主義国的な官僚主義体質が色濃く残ってるんだなあ、と広く知らしめただけでもこの作品に意義はあったのでは、と思いましたが、実はモチーフとなっているのはアメリカで2004年に起こったギルトーザー事件だとか。

つまりはロシアだから、という事ではなく、この映画で描かれている「権力者と一市民の対立の構図」は普遍的に世界中で起こりうる、という解釈をも暗示しているということでしょうね。

ロシアを舞台にすることでよりその本質が際立つ、という効果はもちろんあったでしょう。

とりあえず前半は迫真の社会派ドラマであり、対立劇だったと思います。

真っ当に行政と戦っていたんでは勝ち目がない。

いかにからめ手で敵の黒幕である市長を陥落するか。

どう展開するのか、予断を許さないものがありました。

それがちょっとブレてくるのが後半。

主人公と嫁のいざこざで揉めだすあたりから、微妙に主題をそれて家族ドラマっぽい展開になってきちゃうんですね。

好戦的だった弁護士もいつのまにかフレームアウトしてしまう始末。

まあ、さすがにそのまま全く別の場所に着地する、ということはなく、終盤には軌道修正されて、どうしようもなく救いのないラストへとストーリーはなだれ込むんですが、私が疑問に思ったのは、なぜわざわざ嫁との揉め事を物語に織り込んだのか、という点。

嫁に関係した市長の悪逆非道ぶりを印象付けたかったのかもしれませんが、それ以前の問題としてなんの法的知識もない修理工が弁護士を失ってしまえば権力に勝てるはずもない、という必然が横たわってくるわけで。

そりゃラストもああなるわ、としか言いようがない。

結局、純粋に知恵と法を駆使して闘いを挑んだ結果の結末じゃないんですね。

だから同情こそすれ、死力を尽くしていない顛末にはどこか心に響いてこない重さだけがのしかかってくる、とでもいいますか。

これが弁護士ともども全力を尽くした上での終幕、というなら、まだなんらかの感銘はうけただろう、と思うんです。

そうじゃない、ある意味自分で転んでそのまま起き上がれなくなった、ではそもそものテーマからずれて別の意味を含ませることになってしまう。

ロシア正教の上辺だけの浅ましさにまで言及した部分等、評価すべき点はいくつかあったんですが、肝心の本筋が定まっていないように私には感じられました。

あと気になったのは特に意味なく海のシーンや風景のシーンに尺を割いたこと。

いまだロシア映画はタルコフスキーの影響下にあるのか、とちょっと愕然。

前半の緊張感が好ましかっただけに、何かと惜しい仕上がりの一作。

ちょっと欲張りすぎたか。





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