2012年初出 武富健治
泰文堂アーススターコミックス 全2巻



陸の孤島、赤目村で巻き起こる連続殺人事件を偶然赴任してきた青年医師の目を通して描いた伝奇サスペンス。

赤目村がどういう村で、どういう人たちが住んでいて、その関係性はどうなっているのか、どのような風俗、文化、信仰があるのか、といった物語の背景を担う設定は、恐ろしく緻密に作りこんであり、漫画とは思えぬリアリズムに満ちていたように思います。

これは実際に似たような村なり部落なり取材した経験がないと描けないのでは、と唸らされたほど。

実際1巻の展開はあたかも本格ミステリを読み耽る快楽にも似て、全く先の予想がつかないものがありました。

やっぱり武富健治は人物描写がやたらうまい、とあらためて感心したりも。

いかにも居そうな人間を見てきたようにこの人は描くんですよね。

最近の漫画家でこういう描き手って、本当に少ないと思います。

作者の観察力がちゃんと作品に反映されてる、とでもいいますか。

これは絶対傑作になる、と期待に胸を膨らませていたわけですが、それをもろくも打ち砕いたのが実は2巻以降の展開。

もうね、なんでこうなってしまうのか、と、ただそれだけですね。

最も致命的だったのは、犯人を早々と明かしてしまったこと。

なぜ最後のクライマックスのシーンまで待てなかったのか、と。

ラストの洞窟のシーンで実は・・・とやるからこそあっ、言わされるわけで。

2巻の前半で早々と正体を明かしてしまったものだから、その後の筋立てがもう事後処理でしかないんですよね。

しかも何故犯人がそこまで追い詰められ、凶行にいたったのか、その動機がどこか不鮮明。

豹変したキャラだけで乗り切ろうとするもんだからどんどん物語がチープに絵空事化。

主人公のサイコメトリーの能力にいたってはもはや安っぽいファンタジーと同じレベルで茶番劇に。

前半の緻密さは一体なんだったのか、と目が点。

構成ミス、及び非現実をもっともらしく描くための経験則の欠如。

前半と後半でここまで印象を違え、豹変してしまった作品も珍しい、と思います。

せめて地に足をつけたミステリで現実的帰結を模索してくれてれば、と、ほんとそれだけですね。

変にオカルトに色気を見せたのが大きな失敗。

期待値が高かっただけに本当に残念。

向いてない事に果敢に挑戦したが、結果的に足をすくわれてしまった、が結論。

才能のある人だと思うんですけどね、なにかひとつ間違えるとこうなってしまうのが漫画という個人作業の恐ろしさでしょうか。

この作品のことは忘れるんで、また別の漫画で楽しませてください、といったところでしょうか。



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