フランス 2013
監督 ミシェル・ゴンドリー
原作 ボリス・ヴィアン



原作はどうなのか、未読なんで知らないんですが、ストーリーは非常にシンプルです。

簡単に言っちゃうなら、恋することの楽しさ、けれどもそれが永遠には続かないことのはかなさをつらつらと描いただけ。

ていうかこれ、本当に原作必要か?改変しまくってないか?と疑問に感じられるほど、ありがちな物語だったりするんですが、特筆すべきは、それをゴンドリーはこれまで培ってきたもの全部をつぎ込んで彼だけの作品に仕上げて見せたこと。

まずオープニングからなんだこれ、と度肝を抜かれます。

一室に集められた大勢の男女。

それぞれの机の上をタイプライターがコンベアにのって流れていく。

数行打っては隣の人にタイプライターを渡す、という作業が延々続くのをカメラは追い続ける。

シュールすぎてわけがわかりません。

その手のシュールさ、ギミックはオープニングのみならず、全編にわたって施されていて。

いわく、テレビのコックが勝手にしゃべりだして料理人に指示を飛ばす。

ネズミの着ぐるみをきた小人が室内をうろうろしてる。

蛇口からうなぎが顔を出す。

できあがった料理が踊りだす。

握手してる手首が360度回転。

机が靴を履いてすべっていく。

等々、枚挙にいとまがありません。

本気なのかふざけてるのか紙一重のレベルで延々その手のお遊びをやられるものだから、これはある種のファンタジーととらえたほうがいいのか?と著しく混乱するんですが、ひとつ言えるのはなんだかそれが妙に愛おしく、コケティッシュに感じられること。

ゴンドリーお得意の手口、といえばそれまでなんですけどね、今作に限っては間仕切りを設けずに、あたかも全てが現実であるかのように飄々と進行していくものだからなんだかテーマパークにでも迷い込んだような気分になるとでもいうか。

とりあえず全力で飾ってきた、というのは感じた。

じゃあなぜ監督は全力で飾ってきたのか、というと、やはりそれは待ち受ける悲劇をありきたりにお涙頂戴に演出しないため、だったと思うんです。

まあ私なんかはそれが伝わってきたが故、かえって号泣してしまった、というのはあったんですけど。

決して常道を行く作品だとはいえない、と思いますし、やっぱりどこかMTVみたいだったりはするんですけどね、それもここまで貫かれちゃあ、これはこれでひとつのアートな映画だ、と言っていいのでは、と私は思うんですよ。

まるで宝石箱を開けたかのような錯覚を起こす映画、というのは褒めすぎでしょうか。

若干老けたとはいえオドレイ・トトゥというキャスティングもこの作品にはしっくりきてたように思います。

ゴンドリーという特異な監督の極北であり、ひとつの頂点。

どう見せるのか、という点において、他の誰にもまねのできない一品だと思います。

なんかひどく心揺さぶられた。





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