イギリス/フィリピン 2013
監督、原案 ショーン・エリス



困窮する生活に耐えかね、なんのあてもなくフィリピン最大の都会であるマニラに出てきた田舎暮らしの一家が、田舎に居たころよりも手ひどく痛い目を見てしまう、って作品なんですが、おおむね予想どうりにストーリーが進む意外性のなさこそあれど、思ってた以上に質が高いな、とは思いました。

DVDのジャケットや煽り文句からは派手なアクションとか想像してしまいそうですが、その手の描写は必要最小限。

むしろ、何も持たない人間が都会に来たところで都会はなにも与えてくれない、といった風なシビアなドラマ作りに重点が置かれています。

なんせ上京するなりいきなり全財産を騙し取られ。

さらには仕事をしたくてもコネも資格も学歴もない夫には日雇い人夫の仕事しかなく。

嫁は嫁で子供を抱えて働ける場所を見つけられず、おさわりバーみたいな場所で日銭を稼ぐしかない。

一家が農家を営むことで培ってきた経験がまったく生きないんですね。

ああもう、人が良すぎ、と見ててやきもきしたりもするんですが、でもこれって、ちゃんと働きたくても契約社員や派遣の道しか残されていない日本の状況とどこかかぶるものがあったりするなあ、と思ったり。

最初の選択を間違えると凡人には出直しのきかない社会、と言う意味で、決して人ごとではないように思えました。

そう感じさせる作話のうまさが監督にあった、ということなのかもしれません。

物語が熱を帯びてくるのは終盤。

ようやく得た現金輸送車警護の仕事で主人公ははからずも悪事に加担させられるんですね。

成功すればもう妻と子にお金の心配をかける事はない。

だが失敗すれば即牢獄行き。

夫は何をどう選択するのかが最大の見所なんですが、それがね、私にはちょっと疑問の残る顛末だった。

多分監督は身を挺することでしか社会の下層に生きる彼らには打開の策がなかったんだ、とペシミスティックに訴えたかったんでしょう。

でも私にはそれがどこか短慮な大バクチに見えてしまったんですよね。

本当に他の選択はなかったのか、というと決してそうではない。

時間はかかっても報われる日がくることがあのままでは絶対になかった、とは言い切れないように思うんですよね。

どこか作為的に悲運を演出しようとしたような気がしてならない。

見る人で評価はさまざまかとは思いますが、妻の心情に思いを馳せるなら、どこか納得いかない、と言うのが私の正直な感想。

これを破綻というのは厳しすぎるかもしれませんが中盤までのドラマが素晴らしかっただけに、エンディングのひっくり返し方がいささか乱暴であるように感じました。

力量ある監督だ、とは思うんですけどね。

他の作品を見てみたいところですね。

とりあえず、見て損をした、ってな作品ではない、ってことだけ最後に付け加えておきます。





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