アイルランド/イギリス/ギリシャ/フランス/オランダ/アメリカ 2015
監督 ヨルゴス・ランティモス
脚本 ヨルゴス・ランティモス、エフティミス・フィリップ



独身のままでいることが犯罪とされる架空の世界を描いたディストピアSF。

伴侶と別れるや否や隔離施設に押し込められ、そこで45日以内に恋人を見つけられなければ動物にされてしまう、という設定が、近作でいうなら「パージ」とかあの辺りの安いシチュエーションスリラーのようですが、思いのほかプロットは緻密に練り上げられていて世界観は重厚、どうしてどうして、これ、なかなかあなどれません。

動物云々はちょっとした寓話的遊び心、と解釈したほうがいいでしょうね。

日本に住んでいると、すわ、少子化に対するアンチテーゼか、なんて、早とちりしてしまいそうですが、私の見た限りではテーマはもっと深い。

まあ、それはあとで書くとして、まず私が何より感心したのは、謎を謎のまま放置しない構成の巧みさ、及び語らぬ雄弁さ。

あれ、あのシーン、どういう意味だったんだろう?または、矛盾があるよ、これは設定上、変!と思えるような箇所をいちいちナレーションやセリフで説明せず、全部映像だけで説明し尽くすんですね。

普通に内容を追ってるだけですべてがするすると解き明かされていく。

もう、その気配りの細やかさ、投げ出さない配慮ときたら見事の一言。

確実にランティモス監督は「籠の中の乙女」の頃より進化してきてる、と思いましたね。

また、政府の意向が強引な夫婦関係の成立であるのに反して、森に拠点を置く独立組織は一切の恋愛を禁ずる独身主義者の集団である、とした対比もうまい、と私は思った。

隔離施設から独立組織へと身を投じる主人公は、その場その場でどういう選択をするのか。

その選択の意味するところに充分すぎるほど監督のメッセージはこめられているんですが、私がこりゃすごい、と思ったのはそれを踏まえた上であのラストシーンを作り上げてきたこと。

解釈は様々かと思います。

何故そうなるのか意味がわからん、と言う人も居るかもしれない。

でも私はあのラストシーンに、人を愛するという事がどういうことなのか、それすら見失いがちになってる現代人のままならなさを見た気がした。

結婚が婚前契約書に左右される契約だったり、家と家の結びつきだったり、一夫多妻な家父長制だったりと世界は様々ですが、そうあることで喪失してしまったものをこのラストシーンは集約しているように私は思います。

愛はもっとシンプルでいいんだ、そんなに身構えなくていいんだ、という監督の声が聞こえてくるよう。

傑作でしょう。

私はこの作品、高く評価したいですね。





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