アメリカ 1991
監督 ウォルフガング・ペーターゼン
原作 リチャード・ニーリー



事故で記憶を失った男が、自分の過去を調べていく過程であからさまになる「驚愕の真相」を描いたサスペンス。

ペーターゼン監督のフィルモグラフィーの中では驚くほど話題になっていない一作かと思いますが、断言します、一級品の傑作です。

プロット自体がそれほどものめずらしくもない、というご指摘はもちろんあるでしょう。

記憶を失った男を題材にした映画なんて古今東西にゴロゴロ存在する、と思いますし。

しかしながら、そんな既視感すらものともせぬ語り口のうまさ、鉄壁の完成度がこの作品にはある、と私は声を大にして言いたい次第。

とにかく物語の流れがクライマックスまで一切淀まない。

主人公が自分自身すら信じられない状況下で、妻にまで疑念の目を向けざるを得ない序盤のスリリングな展開といい、中盤以降の、誰が何をしたのか、それがクライマックスまで全く予想できない巧みな構築性といい、まあ、隙がない。

余計なことは一切やらないんです。

見事なまでに贅肉をそぎ落としてきてる。

かといってなにかもの足りないわけじゃない。

なによりも、そこに矛盾や齟齬が一切ない。

そして特筆すべきは全ての謎が一瞬で明らかになるクライマックスシーンでしょうね。

これもう、はっきり言って飛び上がります。

椅子でも座布団でもいいけど軽く5センチは宙に浮く。

真相に驚かされる、と言うのはもちろんあるんですが、それ以上に強烈なのはその「絵」ですね。

私は全身に鳥肌が立った。

詳しくは書けませんが、こんなに恐ろしく感じるものだったのか、という発見にプラスアルファして、そのインパクトを謎解きをも兼ねた演出とした監督の周到ぶりにほとほと舌を巻きました。

初めて見た夜、怖すぎて夢に出てきたぐらい私は印象に残りましたね。

今見ると技法に若干古臭く感じられる部分もあるかもしれませんし、エンディングが若干駆け足だったかな、と思わなくもないんですが、それを差し引いてもこれだけのサスペンスって、そうそうないと思います。

未見の方は是非。

大作ばかりが注目されるペーターゼン監督ですが、その実力のほどはサスペンスでも遺憾なく発揮されていると証明する一作だと思います。





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